遺伝子組み換え技術(いでんしくみかえぎじゅつ)

ある生物が持つ有用な遺伝子を「遺伝子のハサミ」と呼ばれる制限酵素で切り取り、ほかの生物のDNA配列に組み込んで、そこに新たな性質を加える技術です。組み込み方にもいろいろな方法があって、一般的な方法は遺伝子の運び屋のベクター(入れられた微生物に害をおよぼさないDNA断片)に組み込んで、微生物の細胞の中に入れる方法です。

この技術は、個々の遺伝子の性質や働きについての解析が進歩したことより、望ましい性質を担っている遺伝子だけを取りだして、他に組み込むということが可能になりました。例えば、従来、農業分野で行われていた交配などの組み換え育種技術では現象として現れる性質(寒さに強くなった、実が大きくなった等)を得られるけれども、実際に遺伝子レベルでどのような変化が起こったかはわかりませんでした。しかし、新しい遺伝子組み換え技術では、遺伝子の機能がわかっているので、より早く、正確に、幅広い育種や品種改良を行うことができます。害虫抵抗性やウィルス抵抗性、除草剤耐性などの性質を持たせた農作物の開発は遺伝子組み換え技術によるものです。

また、医療分野ではインターフェロン、ワクチン(B型肝炎など)やインスリンなど医薬品が生産されています。糖尿病の治療に必要なインスリンは、これまではブタからインスリンを取り出し、そのまま使用するか、化学反応を用いて異なる部分のアミノ酸をヒト型に変換して、ヒトインスリンを作っていました。最近では、遺伝子組み換え技術によってヒトインスリンの遺伝子を大腸菌に組み込んで、大量に生産できるようになりました。これによって価格が安くて高品質なインスリンの大量供給が可能となり、インスリン注射が必要な多くの糖尿病患者を救うことになりました。そのほか、試薬や工業用酵素の製造など、遺伝子組み換え技術はさまざまな分野で応用されています。